アメリカ東海岸のインディーパンクシーンの王道を突き進むバンド、Thin Lipsの2nd Albumをレビュー。
ビートルズの某アルバムをパロったようなジャケットに写真が載せられている人たちは、ボーカルのTashjianがまるで家族のように大切に感じている人たち。ジャケットに写った人たちが、 TashjianにとってChosen Familyというわけ。
そこには今回のアルバムのプロデュースを手掛けたHop Alongのメンバーや、同じフィラデルフィアで活動するModern BaseballやCayetanaのメンバーが「選ばれて」いる。ボーカルの弟の死っていうショッキングな出来事が歌われる をはじめ、かなり心がキュッと苦しくなる内容の曲が多いけど、そんなときに自分を支えてくれるのがChosen Familyであり、音楽に関わる人たちっていうのを感じて、心がほっと温かくなる。
楽曲面では前作からの変化を感じる。前作”Riff Hard”ではそのタイトル通り、ギターのリフにこだわった曲、そしてその結果荒々しいパンクらしさを感じる曲が多かったけど、今作は実にまろやか。最初にいわゆるインディーパンクを議題してこのアルバムを聴いたときは、ちょっと物足りないと感じてしまったぐらい。
でも、新しいThin Lipsの良さはメロディーの良さ。ボーカルが強調されていて、でもギターのメロディーもしっかりあって、そのバランスが絶妙なんよね。”Smoking is for Quitters”とか”South America”は本当に歌のメロディーが美しい。
ジャンルでいうとパワーポップにも分類されるような音の軽さ。パンクシーンにいながらもこういう方向へシフトするってのは、単純にバンドとしての成熟もあるやろうし、メンバーがプロデュースを担当してるHop Alongからの影響も大きいと思う。
荒々しさや青さの残る楽曲を期待してた人は残念かもやけど、キャッチーでまろやかに進化した新しいThin Lipsを聴いてみてください。