ノイジーでFuzz Rockと呼ばれるサウンドを鳴らすアメリカ、コネチカット州のオルタナティブロックバンド、Ovlovの最新作”TRU”のレビュー。
今作品が実に5年ぶりのリリースとなるOvlovは、東海岸オルタナインディーを語る上で欠かせないキーパーソン、Steve Hartlettが中心となって活動するバンド。1stアルバムリリース後、ソロプロジェクトのStoveに注力するため活動休止状態になってたけど、いくつかのEPやスプリットのリリースを経て見事なカムバックを果たした。
浮遊感のある歌いかたと曲全体の質感はNothingみたい、毛羽だった粗っぽさ剥き出しのギターサウンドはまるでDinasour Jr.みたいって形容できるけど、Dinasour Jr.と比べるにはあまりにも美しいし、Nothingと比べるにはあまりにも直球でアグレッシブ。このバンドならではの絶妙なバランス感がある。
轟音やノイジーと呼ばれるバンドはあんまり得意じゃない自分やけど、Ovlovはじっくり聴けちゃう。それはやっぱり繊細な美しさがあるからやと思う。それを象徴するのが、とてつもないヘビネスをイントロでぶちかます、Spright。ずっとノイジーなギターは鳴り続けてるのに、決め細やかでしっとりとしたサウンドに癒しを感じるほど。
あとダイナミックに自由気ままに展開し続けるギターブレーズもめちゃくちゃ魅力。疾走感に伴う爽快感、素敵なんです。Short Morganのギター聞けば、草原の青臭さやあの夏の甘酸っぱさが鼻をツンとさせるような気になるし、ちょっぴり色褪せた映像の質感が特徴のヨーロッパ映画に出てくる街の光景がぼやっと目の前に広がる。
もはや何を言ってるか分からなくなってしまったけど、とにかく深みのあるサウンド。そして、決して難解ではなくて、水みたいにすっと体に入ってくる。そのうち気がつけばすっかり音の渦に溺れてしまってる。めちゃくちゃいい音源なので、騙されたと思ってこのアルバムに全身を預けてみて欲しい。うるさい音楽って、こんな気持ちよくなれるんやって思っちゃうはずやから。