自分にとってやっぱり特別な The FEST

ゲインズビルで毎年開催される秋の風物詩 aka パンクロックの祭典、The FEST が今年も無事終了しました。

ライブにおける興奮は一通り味わったなと、気持ちが落ち着いてしまっている自分ですが、それでも開催時期になると毎年ソワソワしてしまう、そんな自分にとっての特別な存在が The FEST です。

ニュースで取り上げたり、ライブレビューを書いたりは散々してきたけど、よく考えたらちゃんとした説明記事みたいなのを書いたことがないなと思ったので、簡単にまとめ記事を書いてみました。

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The FESTとは

Photo from Orland Weekly Photo Galleries

改めて The FEST とは。

毎年、10月末から11月頭にかけての金・土・日の3日間の日程で、フロリダ州にある Gainesville という田舎町で開催されるパンクロックフェスです。いわゆるサーキット形式のフェスで、町中にいくつも用意された Venue で同時並行的にたくさんのライブが、昼間から夜中まで開催されるイベントで、アメリカ中からはもちろん、世界からパンクロックファンが集まります。

初開催は2002年。主催者は元々No Idea Records の広報係だった Tony Weinbender という人物です。ちなみに、Wikipedia には FEST の主催者として Tony の名前しか書かれていませんが、FESTに出演するバンドたちは “Thank you for Tony & Sarah” のように、Sarah という人物の名前も主催者として挙げます。おそらく Sarah Dyer という No Idea でファンジンを作っていた人も、FESTの創成メンバーなんだと思います。

 

ちなみに、Gainesville は規模の小さい街なんですが、優秀な学生が集まるフロリダ大学がある街なんです。で、そのフロリダ大学に通っていた学生がファンジンという形でスタートさせたのが No Idea Records というレーベルで、その存在が Gainesville を 今も Punk Rock City たらしめている大きな理由の1つです。

ただ、Hot Water Music や Against Me!、Less Than Jake のような才能が、たまたま Gainesville に集結していたってのもデカくて、アーティストサイドとファンコミュニティサイドの両方がうまく合わさって、今の Gainesville や The FEST の形があるんだと思います。自分はその歴史だけで何度でも興奮できます。

Gainesville のパンクの歴史については、Gainesville Punk: A History of Bands & Music っていう本があるのと、それに関連したVICEの記事があるので、気になる人はそちらを読んでみてくださいね。

 

The FESTの魅力

The FEST の魅力を一番わかりやすく伝えるなら、「この上ない非日常感」という表現になると思います。非日常の最上級。今まで参加したライブイベントの中で一番楽しかったと、なんの迷いもなく言えるイベントです。

もちろん、海外に旅行してライブを観られる時点でこの上ない非日常なんですが、参加している自分だけじゃなく、そこに集まっている全員が作り出す空気感が、非日常を演出してくれるんですよね。

 

フジロックのことが好きな人が使う「フジのために1年間働いてきた」って表現があると思うんですが、FESTにいくまでは「そんなバカな」って冷めた感じで思ってたんですよ。ただ、FESTに行くと、本当にそんな雰囲気を漂わせた人が、おそらく世界中から集まってきていて、なるほど、本当にそういう人っているんだなって思って、今ではそのフジロッカーの表現も悪くないなって思うようになりました。

期間中は、街ゆく人全員がパンクロック好きという状態に。ライブハウスに行くと、「あ、そのTシャツかっこいいな」って思う人に出会うことがあると思うんですが、それが1分に1回の頻度で起こるって感じ。FESTに協賛しているビール、Pabst Blue Ribbon が 500ml缶 2ドルとかで売られていて、たくさんの人が大量のビールを飲んでいるんですが、路上での飲酒は禁止されているし、理性を失うほど酔っ払う人はいないから、ただただ熱量をあげるブースト剤として機能しているのも最高なんです。

あと、10月末だというのに、余裕でTシャツ1枚で過ごせちゃうっていう気候の快適さも、気分をアゲてくれる要因。これは、Dillinger Four の Gainesville っていう曲にも歌われていて、参加中は会場に向かって歩いている途中に、ずっと頭の中で流れます。

 

で、ライブ自体の魅力でいえば、お客さんの熱量を挙げないわけにはいかないでしょう。ベテランバンドのライブになると、全曲全員全パートシンガロング状態で、その輪に包まれながら幸せな気持ちでライブを観られますし、まだまだお客さんの少ない若手バンドのライブでも、前の方で10数人はめちゃくちゃ熱量の高いお客さんが必ずいて、好きのパワーが溢れているのって最高だなって気分になれるんです。

また、出演する側も FEST が大好きで、FESTという空間を楽しんでいるのもいいんですよね。今年も FEST直前に Timeshares が最高のツイートをしていて、見かけた瞬間、冗談じゃなく本当にその場で拳を掲げました。ステージ袖で仲のいい他のバンドメンバーが歌いながらライブを観ていたり、突然ステージに乱入したりもあったりで、「やっぱり、〇〇のメンバーってこのバンドのこと好きなんやぁ」とか、「え、▲▲のメンバーがこのバンドと仲がいいの意外やなぁ」とか、そういう発見があるのも楽しいポイントなんです。

あと、フェスでありながら、ほぼ全てのステージが普通のライブハウスで、大型フェス特有の「観たいバンドやけど音がビミョー」みたいなことが少ないのも魅力。唯一、メインステージだけは野外に特設された大きなステージなんですが、有名なパンクロックバンドを演奏を聴きながらまったり過ごすっていう優雅な体験ができちゃうので、それはそれで素敵なんです。

 

とまぁ、語り出したらキリがないほど魅力を持ったライブイベント、それが The FESTなんです。詳しくは、過去のレビューを読んでみてください。

 

2021年のFEST

今年開催されたのは FEST 19。「19」は開催年の下2桁を表すのではなく、「19回目」の開催であることを表しています。昨年はコロナの影響で中止となり、2年ぶりの開催となりました。

今年のFESTは、出演アーティスト数がとんでもなく多く発表されていたのが特徴でした。ただ、やはりコロナの影響で直前になって出演を取りやめるアーティストも多く、このことを考えて、今まで以上にたくさんの出演アーティストを発表していたのかと合点が行きました。

たくさんの出演アーティストの中で、自分が一番みたいなと思ったのは Crime In Stereo。大好きなバンドってのはもちろん、2006年リリースのアルバム “The Troubled Stateside” の再現セットをやることが発表されていたからです。今のところYouTubeやTwitterを検索してもライブ映像は見つかりませんが、そのうちアップされるだろうことを楽しみにしておこうと思います。

あと今年は、アメリカのDIYフェスにおいては珍しいぐらいしっかりとしたコロナ対策を発表していて、そういうところでも「やっぱりFEST、いいなぁ」となりました。

 

 


以上、ゲインズビルに思いを馳せながら文章を書いたら、思った以上の長文になってしまいました。

すでに The FEST は来年も開催されることが、日程と一緒に発表されています。来年の第1弾アーティストが発表されるころには、「日本から The FEST に行く方法」っていうハウツー記事も書き上げたいと思います。

この記事で The FEST のことをもっと知りたくなった人は、ぜひ YouTube でいろんなライブ動画をディグって見てください。きっとパンクロックがもっと好きになると思います。結局、カッコつけてない全力が一番カッコいいんよ!!

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